さとやまノート松代エリア地元ライター

「小荒戸の棚田」で稲刈り&稲架(はさ)がけ

2023.10.20

9月、越後湯沢からほくほく線に乗る。十日町駅からいくつかの山を超え、いよいよ最後のトンネルを抜けるとそこは松代(まつだい)だ。

左に視線をやると、美しい黄金色の棚田。丸っこいフォルムの不思議な安心感に包まれる。その間ほんの10秒。それから電車がスピードを落としていくのに呼応して、あぁ、帰ってきたなと思う。

今日の記事は、この「小荒戸の棚田」が主役です。

農林水産省は全国271地区の優良な棚田を「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」に認定しています。このうち十日町市では1市町村として全国最多の14棚田、松代地区には以下の7棚田があるのです。

「小荒戸の棚田」も、そのひとつ。面積は1.9haほど。

「小荒戸の棚田」全景

※松代地区の認定棚田:
星峠の棚田、儀明の棚田、蒲生の棚田 、松代の棚田 、蓬平の棚田、小荒戸の棚田、菅刈の棚田

日照りのときは集落内を流れる「源太川(げったがわ)」から水揚げすることもできるこの棚田。

林道は「ゲッタ街道」と名付けて親しんでいるそうです。かつては近くに高校の寄宿舎もあり、松代の中心部に出るのに重要な生活道でした。冬場には道付けを行って、急病人が出た際には行列を作って、病院まで病人を運んだ道路でもあったそう。


集落内の大地の芸術祭作品で有名なのは、常設40体におよぶ「帰ってきた赤ふん少年」。毎年冬には、赤ふん少年たちに服を着せる催しもあるそうです。
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/boys_with_red_lion_cloths_returned/

関根哲男「帰ってきた赤ふん少年」Photo Miyamoto Takenori + Seno Hiromi

9月初旬、松代地域でも稲刈りが早い、ここ小荒戸の棚田でご縁を頂き、稲刈り&稲架がけをさせていただけることになりました。

今回お世話になったのは、ここ小荒戸集落で約50年にわたり耕作している笠原等さん。集落の地域おこし活動や、大地の芸術祭作品の受け入れも行ってきました。

笠原等さん

集まったメンバーは、大人から子どもまで、15名ほど。稲刈り鎌を使って、器用に稲を刈っていきます。

●稲を束ねる所作が美しい

基本的に左手で掴み、右手で刈っていきますが、ここにもポイントが。

稲刈り鎌は、刃で稲を横に少し倒す形にして、斜め下に引くのだそう。そうすることで、左手の指を間違えて切ってしまうのを避けられるそうです。

筆者が特に苦戦したのは、稲架がけをするのに稲を束ねるやり方。

藁を4〜5本とり、稲の束の上から被せ、持ち上げ、クルン、そのまま遠心力でまたクルン。そうすると、しっかり稲は束ねられていて、結び目の脇に藁の余った部分を差し込むと、完成!

と、見ているとスムーズなのですが、実際にやると全然上手くいかない・・・

地元のお母ちゃんたちも、手際よくクルン、クルンと次々に稲束を量産していきます。

筆者のような落第生にも、笠原さんは根気強く教えてくれて、なんとか原理が理解できたところで本日の刈り分は終了!

自分もいつかは舞を踊るように美しい所作で稲刈り&束作りができるよう特訓せねばと思いました。

●高さのある稲架場、かつては10段にも

稲刈りが終わると、次はいよいよ稲架がけ。松代地域の協力隊である高木さんと、十日町市観光協会の桑原さんも一緒に、稲束を投げ渡し、高さ4〜5mほどの場所にかけていきました。

これ、昔は10段くらいあって、高さもメッチャ高かったそう。。

稲束を高くまで投げ上げるコツとして、稲の太い部分である根本を少したわませて持つと、バネの原理で投げやすくなるのだそうです。

またに飛距離が足りないときもありながらも、チームメイトのキャッチ力に助けられて次々と稲を架けていきました。

稲束は、陽当たりのよい方を少し多めになるように割ってかけるのがポイントだそうです。

●とれたての新米、まるでもち米のよう

稲刈りの合間には、今年のとれたて新米のおにぎりが振舞われました。まるでもち米のように、モチモチして美味しい!

笠原さんいわく、刈りたての新米は水分量がまだ少し多いため、ひと冬越して2月くらいから6月の梅雨前ぐらいまでが、お米の食べ頃としてはオススメだそう。

笠原さんの自宅隣のガレージには、稲の乾燥機と籾摺り機が置かれ、早くも玄米の袋詰め作業が始まっています。この翌日、笠原さんを訪ねるとコンバインで収穫した籾(もみ)が次々と運び込まれてきました。

ドーム状の天井と壁に、これまでの地域活動の様々な写真が飾られています。

いよいよ、食欲の秋。今年は日照りに悩まされた松代の棚田たちですが、収穫したお米たちを食べるのが楽しみです。

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この記事は十日町市のミッション型地域おこし協力隊 星さんが執筆しました。
星さんは2023年度から蒲生集落に移住し、越後松代棚田群を中心とした、里山暮らしの魅力発信や、都市住民と連携した棚田の保全活動に取り組んでいます。

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この記事をかいた人

地域おこし協力隊

十日町市在住の地域おこし協力隊。様々な活動で十日町市を盛り上げていきます! 地元目線の記事をお楽しみください♪