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蒲生の棚田で”ジョソササイズ” 広がる関係人口の輪【越後松代棚田群】

2023.07.27

皆さんは、「草取り」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
面倒?暑そう?腰を痛めそう?
梅雨の中休み、青空も垣間見える6月中旬の「越後松代棚田群 蒲生(かもう)の棚田」には、そんなイメージとは全く異なる景色が広がっていました。

今年の4月に復田し、3年間の耕作放棄地から蘇った蒲生の棚田の6枚。全て無農薬・無肥料の自然農法で耕作しているため、当然のように雑草も元気に育っています。あぜ道はもちろん、田んぼの中、苗と苗の隙間にも生え、このままでは土の栄養が雑草に取られてしまいます。

この雑草生い茂る田を訪れたのは、東京・世田谷の地域コミュニティ「チーム用賀」とその繋がりで集まった出光興産の有志メンバー20名ほど。ここに、地元である山平郵便局からも3名加わり、棚田の維持保全を行う一般社団法人トロノキ棚田トラスト(以下、トラスト)のメンバーと合わせて約30名が集まりました。

10代から70代まで、田植えでも、稲刈りでもなく、一斉に田んぼ内の「草取り」をしようというのです。

蒲生の棚田近く、トロノキハウスに集合

名付けて、ジョソササイズ

近年、除雪とエクササイズをかけたジョセササイズという言葉をよく耳にしますが、ジョソササイズは除草とエクササイズをかけた言葉です。
考案したのは、トラスト代表の阿久澤剛樹(あくざわ・ごうき)さん。楽しみながら除草して、気持ちのいい汗をかくというコンセプトで企画しました。

「チーム用賀」で今回の企画の旗振り役になってくれたのは、金野とよ子さん。
東京・世田谷に住みながら20年以上にわたって松代に通っており、“世田谷生まれ、松代育ち”でおなじみの「世田谷マーマレード」を生み出し、松代で活動する古民家再生の建築家であるカール・ベンクス氏に感銘を受け『古民家のひみつ』を昨年出版。筆者が初めて松代を訪れるきっかけになった方でもあります。

トラスト理事の柳芳健(やなぎ・よしたけ)さんの合図で除草作業がはじまると、「ほんとに好きだわ、草取り!」とひときわ心地良さそうに田んぼへ入っていく金野さん。「チーム用賀」のメンバーも続々と、トロトロの泥に足を踏み入れます。太陽のエネルギーを受けた田の泥は、足を包み込むような優しいぬくもりを持っていました。
中には、生まれて初めて田んぼに入った方も。2年前、筆者にとって初めて田んぼが観るものから入るものになったのも、草取りだったことを思い出しました。

復田した田の1枚には、端まで雑草がびっしり

トラストがこの春復田した6枚のうち1枚(約0.5反)は、ホタルイというイグサの一種が猛烈に繁茂しており、田植えをした条(=稲の列のこと)が全く見えない状態でした。

「だんだん、稲と雑草の違いが分かってきた・・・!」

田んぼ初心者のメンバーは、最初は苦労しながらも30分ほど除草しているうちに手感覚で雑草だけを抜き分けることができるようになってきた様子。取った草は、腰に巻いた苗カゴに入れたり、畦まで放ったり。ときには畦まで届かず、バシャッと泥が弾ける音と、泥を被った笑い声も聞こえてきました。

「これは、ジムでスクワットをするより筋肉痛になりそうだ」

太ももからお尻にかけて、早くもジョソササイズが効いてきているようです。

梅雨の合間の棚田に賑やかな声が響く

手除草を行う隣の田んぼでは、「田車」「中野式除草機」という道具を用いての除草も。
初めて触る除草道具に、メンバーは大興奮。小刻みな腕の動きが求められる中野式除草機は、上半身全体の筋肉にもかなり効いてきます。

参加者に感想を聞くと、「同じ除草でも、筋肉を意識してやると全然違う。何より楽しかった」「自分たちが食べているお米のありがたみが増した。農家の皆さんに感謝」と話してくれました。

山平郵便局からは伴内局長を含む3人が助っ人参加

作業を終えた後は、芝峠温泉「雲海」へ。八海山や苗場山などの山々を大パノラマで望む絶景の露天風呂が魅力で、筆者も毎週のように通います。

お風呂で汗を流した後は蒲生の棚田から歩いて3分、トロノキハウスの裏庭でバーベキュー。トロノキ棚田トラストや地域おこし協力隊のメンバーのほか、長きにわたり、蒲生の棚田を耕作してきた山岸進さんも参加。棚田を守ることの想いを聞くことができました。

乾杯の様子。地元猟師によるジビエも振る舞われた

一方で、ジョソササイズ参加者を対象とした事後のアンケートには「もっと地域の方と交流したかった」「週末だけでなく、長期滞在もしてみたい」という意見もあり、より深い関わりや交流を求める声も見受けられました。

無農薬の田んぼに立ちはだかる最も大きなハードルは、除草です。雑草が多いと害虫が増えたり、稲が病気にかかりやすくなってしまいます。
しかし、この雑草生い茂る田んぼが、気持ちのいい汗を流したい都市の人々にとっての憩いの場になるとしたら

除草作業して、本当に癒やしになるの!?デスクワーク中心の皆さん、ぜひジョソササイズ”に参加して確かめてみてはいかがでしょうか。

“ジョソササイズ”を終えた皆さん。稲の列が見えた!

越後松代棚田群 蒲生の棚田
https://www.tokamachishikankou.jp/spot/kamounotanada/

蒲生の棚田の復田や、イベントの様子は下記「一般社団法人トロノキ棚田トラスト」のFacebookページでもご覧いただけます。
https://www.facebook.com/groups/toronoki.tanada.trust

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この記事は十日町市のミッション型地域おこし協力隊 星さんが執筆しました。
星さんは2023年度から蒲生集落に移住し、越後松代棚田群を中心とした、里山暮らしの魅力発信や、都市住民と連携した棚田の保全活動に取り組んでいます。

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この記事をかいた人

地域おこし協力隊

十日町市在住の地域おこし協力隊。様々な活動で十日町市を盛り上げていきます! 地元目線の記事をお楽しみください♪