さとやまノート松代エリア地元ライター棚田のようす
埼玉のベンチャー、棚田で深まる社員の絆【越後松代棚田群 蒲生の棚田】
2023.07.01
「苗、投げまーす」「こっちもお願いしまーす」
棚田を抜ける風が気持ちいい5月、ひときわ賑やかな声が「越後松代棚田群 蒲生(かもう)の棚田」に響いていました。
声の主たちは、埼玉県富士見市に本社を置くベンチャー企業、「ASTRA FOOD PLAN」とそのボランティアサポーターズのメンバー。総勢約20名ほどが、今年耕作放棄地から復田し、耕作を開始した蒲生の棚田の1枚に入り、田枠で引かれた格子に沿って手際よく手植えしていきます。
メンバーは20代前半から、70代後半まで。多世代ながらも和気あいあいと、チームワークの良さが際立っていました。筆者が20代のメンバーに声をかけると、「実は入社して2日目なんです」「社員の皆さんとリアルにお会いするのは初めてです」と意外な返答が。
ASTRA FOOD PLANは、2020年に創業した埼玉県のフードテック企業。創業から2年間は3名ほどで事業を立ち上げてきましたが、この1年で社員や協業先として関わる人が一気に増えたことを背景に、「棚田の田植え研修」を企画しました。「これから一緒に会社を盛り上げていく仲間の相互理解を深められたら」と加納代表は意気込みます。
入社2日目の社員のほか、普段はリモート会議でしか顔を合わせる機会がないメンバーなど、リアルな接点を作りづらかったという課題もありました。今回、田植えの前日に「松代棚田ハウス」に宿泊し、プロジェクターも完備した食堂・ホールで行った座学の研修では、メンバー全員の性格診断テストに基づいたワークショップを実施。お互いの強みや補い合う部分を共有しました。
そして翌日、天候にも恵まれながら、蒲生の棚田を復田・耕作支援を行う一般社団法人トロノキ棚田トラスト理事の柳芳健(やなぎ・よしたけ)さん指導のもと田植え研修を実施。約0.5反(約500㎡)の田を、ものの1時間半で植えきり、柳さんもその出来ばえに大満足の様子でした。
「座学で共有したお互いの特性を、田んぼに入ることで実際に垣間見ることができ、答え合わせができた。棚田という素晴らしい自然環境に囲まれて、皆と達成感を共有できたのは本当によかった」と加納代表も手応えをにじませます。
棚田での企業研修を受け入れたトロノキ棚田トラスト代表理事の阿久澤剛樹(あくざわ・ごうき)さんは、「都市部の企業が求めているものと、棚田の持っている多面的な価値がマッチングすることで、両者がwin-winな関係になった象徴的な出来事になった。まさに、時代が棚田を求めているのだと思う」と都市里山交流の新たな展開に期待を寄せました。
コロナ禍でリモートワークを取り入れた企業が多く存在するなか、リアルなコミュニケーションの大切さを再認識する動きも増えています。企業や組織に所属するメンバーがフラットな関係性で交わり、自然とコミュニケーションが生まれる場というのも、「棚田」が持つひとつの魅力なのではないでしょうか。
今年、蒲生の棚田で行われた復田については、こちらの記事もご覧ください。
蒲生の棚田の復田プロジェクトをご存知ですか?【越後松代棚田群】
******
この記事は十日町市のミッション型地域おこし協力隊 星さんが執筆しました。
星さんは2023年度から蒲生集落に移住し、越後松代棚田群を中心とした、里山暮らしの魅力発信や、都市住民と連携した棚田の保全活動に取り組んでいます。
******
この記事をかいた人
地域おこし協力隊
十日町市在住の地域おこし協力隊。様々な活動で十日町市を盛り上げていきます! 地元目線の記事をお楽しみください♪